車のガラスは粉々に?
事故にあったクルマを見るとガラスが残っている車・完全にガラスがない車と様々ですが、なぜ残ったり残らなかったりするか知っていますか?
命を救う粉々になるガラス
自動車の誕生
自動車の誕生からさかのぼりましょう。
1886年にドイツで誕生したガソリン自動車には運転席はあるもののキャビンと呼ばれる運転室はありませんでした。
そのため、運転者は風に吹きっさらしになるという過酷な状態で運転していました。
技術の進歩で最高速度が上がると前方からの風がさらにひどくなり目も開けられないくらいの状況だったそうです。
このころからドライバーは目を守るために風防メガネを付けるようになりました。
快適性の付加
1990年からは各国も自動車産業に乗り出しました。
各メーカーは運転中の快適性を向上させようと開発を進めていきます。
そこで運転者の快適性を向上させるため、フロントガラスが取り付け始められます。
このころから運転席もキャビン(室内)形状になり、自動車の形が現在のように進化しました。
ただし、この時のガラスは一般的な窓ガラスと似ていて衝撃で簡単に割れてしまうものでした。
合わせガラスの誕生
事故の衝撃でガラスが割れるとさらにケガをしてしまうため合わせガラスというのもが開発されました。
合わせガラスとはガラスとガラスを樹脂膜で接着しガラスが割れても飛び散らないようになったガラスです。
合わせガラスは割れても破片が樹脂膜でつながったままになります。
そのため
ガラス片によるケガの危険を減らすだけでなく、
ガラスを突き破って人体が外に飛び出るのを防止する
という役割もあります。
日本では1987年(昭和62年)から自動車の保安基準に定められ、義務化されました。
けっこう最近のことなんです。
そのため、事故を起こした車を見てもフロントガラスはヒビだらけなのに車体に残ってたりするんです。
また、合わせガラスを接着する樹脂ににさまざまな性質を付加することで、紫外線や赤外線のカット、防音などの効果も生み出しています。
余談ですが、この合わせガラスは、鉄道車両や航空機、建築物など、さまざまなシーンで使用されています。
知らず知らずのうちに生活の中で合わせガラスの恩恵を日々受けています。
事故車でガラスがない車
それはフロントガラスとは性質の違うサイドガラスやリアガラスが割れてしまっているのです。
フロントガラスはガラス破片によるケガの防止のため合わせガラスとなっていますが、
サイドやリアのガラスは強化ガラスであり、割れやすい性質を持っています。
事故によって車内に取り残され車体もねじれてドアも開かない時、に唯一脱出口となるのは窓ガラスの部分です。
自動車のガラスを全て合わせガラスにしてしまうと内側からも外側からもガラスを破壊することが出来ずに救出できなくなってしまいます。
そこで、乗員の周辺に設置されるサイドウインドウやリアウィンドウのガラスは割れやすくなっています。
その特性は、割れると一発で粉々になる性質を持っています。
強化ガラスだと衝撃に強い?
強化ガラスはその名のとおり一般的なガラスより衝撃に強く作られています。
自動車のガラスも強化ガラスでできているので金槌で叩いても割れません。(力いっぱいたたいたら割れますが。)
それでも割れやすいんです。
その理由は衝撃の加わり方に関係します。
平面的に面での衝撃には強く作られていますが、突起物などの点での衝撃には簡単に割れる構造となっています。
そのため、市販されている脱出ハンマーの先端も尖った形状になっています。
緊急時脱出ハンマーがない時の場合
レジ袋に硬貨を数枚入れて振り回して当てることにより、硬貨の角が点の衝撃となりガラスが粉々に割れます。
脱出ハンマーがない時の奥の手です。
脱出ハンマーは手ごろな値段で販売されているので、車の車載工具として置いておくと万が一の時に助かります。
このように自動車のガラスには飛び散らないガラスや粉々になるガラスを場所ごとに採用することで利用者の安全を確保する重要な役割を持っているんです。